【セミナーレポート】「スヌーズレン〜親と子のファンタジーな時空間〜」by橋本敦子さん

2021年 12月05日

AET秋のオンラインプログラムの締めくくりとして、

オンラインセミナー「スヌーズレン〜親と子のファンタジーな時空間〜」を開催しました!

今回の講師は、橋本敦子さん(Relax’Creation project株式会社 代表取締役/スヌーズレン・ラボ代表/NHKエデュケーショナル インクルーシブ教育プロジェクト ディレクター)です。

橋本さんは、2011年に内閣府のソーシャル・エンタープライズを産み出すコンテストでの入賞を経て起業され、これまで「子どもたちの【心】にコミット」して活動を続けられてきました。子どもを対象とした映像、音楽などのコンテンツ製作からスヌーズレンを知り、スヌーズレン本場の地、オランダでコーチトレーニングも受けられた橋本さん。

今回のセミナーでは、スヌーズレンを正しく理解するための歴史的背景~実践に繋げるための知識や理論、体験などからの具体的な紹介を、わかりやすい言葉とスライドで丁寧に説明いただきました。

セミナー冒頭で、橋本さんから参加者のみなさんへ投げかけられた質問がありました。

「あなたの【好き】はなんですか?お父さんお母さん、ご自身が好きなことを思い浮かべてみてください。」

日頃、子どもに合わせることばかりで、自分は何が好きだったのか思い出すことすらできない…。そんな親や介助者が癒されることも、スヌーズレンの大きな目的の一つになっているそうです。

参加された数名の方から、五感に当てはめて「好き」を共有していただきました。

「聴く」は、故郷の海の音や雨の音、「触れる」は、はだしで芝生を歩く、「見る」は映画やお笑い、「嗅ぐ」はコーヒーやハーブの匂い、「味わう」はコーヒーやスパイシーな食べ物などが回答としてあがりました。

普段なかなか意識することがない自分の「好き」に、時に考え込まれる様子も見られました。

そしてここからは、スヌーズレンの歴史と捉え方などについて。

スヌーズレンは、1970年代にオランダで、重度知的障害者を対象にした取り組みとして誕生しました。当時は専用機器などはなく、クッションでスペースを作ったり、弱い力でも楽しめる風船や、匂い・感触として干し草を利用したり、鏡(アイデンティティの確認)が使われたそうです。

語源は「Snuffelen(クンクン臭いを嗅ぐ)」と「Doezelen(寝ていない状態のうとうと)」を足して「Snoezelen(スヌーズレン)」。

「クンクン」が【全ての感覚を使う探索】、「うとうと」が【リラックス】を表し、「多様な感覚の組み合わせと、うとうとすることがリラックスに繋がる」という意味を持つ造語だそうです。

スヌーズレンのコンセプトは「光・音・香り・振動・触覚の素材等を用いて感覚器を直接刺激するものを豊富に備えた環境設定」だそう。大事なのは、「利用者自らが好む感覚を楽しむことができる」ということ。そして、①利用者、②介助者、③スヌーズレンルームの3つが揃うことで、スヌーズレンの取り組みと言うそうです。

本来は利用者に合わせた環境作りのはずが、環境に利用者が合わせるという逆の認識になっているケースも少なくないようです。

その要因のひとつには、各自のフィルターを通してスヌーズレンの解釈や情報が伝えられてきたことにあるとのこと。

日本でもよく耳にするようになったセンサリールームとの違いについても、分かり易くスライドにまとめてくださいました。

関わる人のあり方としては、利用者に指示や誘導ではない、温かいアプローチが必要で、「利用者の立場に立って心地よさを考えること」が重要になるそうです。

何よりも、考えずに感じる!ことが一番大事と、橋本さんは力説されていました。

さて、ここからは感覚についてのお話。

前回11月21日に開催された梶原先生のオンラインセミナーに参加された方は、感覚についてより理解が深まったのではないかと思います。

どんな子にも、親や介助者にも癒しとなるスヌーズレンですが、感覚や発達についての知識も重要だそうです。

聴く(聴覚)、触れる(触覚)、見る(視覚)、嗅ぐ(臭覚)、味わう(味覚)に加え、前庭覚、固有覚を含んだ七感の紹介がありました。

感覚の積み木でしっかりとした土台を作ることがなぜ重要となるのか。スライドを用いて分かり易く説明いただきました。

言葉は認知機能が必要ですが、この言葉がうまくいかない場合は、「原始的なアプローチ」として色・光・音などを用いる方法もあるそうです。

また、障害とは無関係に、まだ言葉が出ない赤ちゃんに対しても同じことが言えるそう。

「非言語コミュニケーションは視線、顔色、匂い、声のトーンなどで行われますが、親が忙しかったり余裕がなければうまくいきません」と話される橋本さん。

そういった状況にも、スヌーズレンが活躍するというお話は支援者の私たちも大きく頷く場面でした。

その他、専用機器やおうちでできるスヌーズレンのアイディアも多数紹介いただき、短い時間の中で濃いお話をたくさん聴かせていただいた今回のオンラインセミナー。

「子どもにとって一番の環境は周囲の大人。大人が癒され余裕を持つことにより、非言語コミュニケーションがうまくいき、お互いに穏やかな時間が生まれる。」とまとめられた橋本さん。

障害を持つ子どもの親(介護者)に対するケアの必要性も感じつつ、arTeaTreaTのプログラムでも、できることをひとつずつ、丁寧にしていきたいと改めて感じた今回のセミナーでした。

橋本さん、参加者のみなさま、貴重なお時間を一緒に過ごせたこと、嬉しく思います。ありがとうございました!

また、橋本さんが代表をされているスヌーズレン・ラボのHPトップに掲載されている動画を、こちらでも紹介させていただきます。

さて、冬のAETプログラムも引き続き企画練り中です。

1月23日(日)はおなじみアートの会、1月29日(土)10:00~は「シブリング(きょうだい児)」をテーマに、きょうだい児ご自身であり、「静岡きょうだい児会」を立ち上げられた沖 侑香里さんをゲストにお招きしてオンラインセミナーを開催予定です。

マザラジオも引き続き、収録~編集作業中です!

その後のプログラムも内容が決まりしだい、HPやSNSにて配信していきますので、引き続きチェックしてみてくださいね♪

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